研究概要 |
肺がんの早期発見,早期冶療を目的としてX線CTによる集団検診の実施が考えられている.しかしこの方式の一つの問題点は診断する医師の負担が大きい点にあり,そこで計算機による自動スクリーニングシステムの開発に着手した.このシステムの最重要課題は,計算機による異常病巣認識性能を飛躍的に向上させることであるが,本研究ではそのための特徴抽出・識別手法として3種類の互いに独立な手法を導入し,それらの論理積を採る方式を開発した. 以下にその概要を述べる. (1)3次元モデルマッチング法 異常ながん陰影を球で表現し,また正常陰影の6割以上をしめる血管陰影については幾つかの円筒をつなぎ合わせた3次元モデルで表現する.このモデルと実際に入力されてくる病巣候補陰影を比較し,がんモデルと血管モデルのどちらに近いかによって入力画像を判定する手法を開発した(3次元モデルマッチング法). (2)部分空間法 病巣候補陰影の関心領域内に分布する全てのCT値そのものを特徴量(33x33=1089次元特徴量)として採用する手法である.ただし,このままでは扱う特徴量が膨大となりすぎるので,主成分分析法を用いて10次元に情報圧縮を行った上で識別を行う方式を新たに開発した(部分空間法). (3)発見的特徴抽出法の改良 病巣候補陰影中から,面積や周囲形状,CT値分布,テクスチャ情報など,研究者が経験的に有効と見なした15個の特徴量を選択し,それらによって作られる特徴量空間上で統計的識別関数を設定してがん陰影と正常陰影を識別する手法(発見的特徴解析法)の改良を行った. (4)実症例による認識精度の確認実験 以上のアルゴリズムを実際の症例に適用した.3病院から収集された約200症例の異常症例に対して97%を正しく検出することが出来た.ただ,正常を異常と見なす読み過ぎがまだ多いので(17個/スライス),この点の改善が今後の課題である.
|