研究概要 |
本研究では,アドバイスを与える際,最初から詳細な助言を与えるのではなく,最初は簡単なヒントを提示し,徐々にアドバイスを詳しくして行くべきであると考え,段階的にアドバイスを提示するアドバイス提示モデルを提案した.実装したシステムにおいては,原則として学生が同じプログラムに対してアドバイスを要求するごとにアドバイスを詳しくするが,次のレベルのアドバイスを提示するまでに時間制限を付ける形とした. また,事例に基づくアドバイス文生成法を2つ提案した.過去のアドバイス事例との類似性に基づいてアドバイスを行う方法であり,「類似性に基づく方法」と呼ぶ.アドバイス事例はアドバイス対象となるプログラムとそのプログラムに対して提示したアドバイス文の組で構成する.2つめは,正しく動作するプログラムとの差異を解析してアドバイス文を生成する方法であり,「差異に基づく方法」と呼ぶ.正しく動作するプログラムは,我々が既に実現したプログラム評価支援システムの評価事例ベースに含まれるものが利用可能である. 以上で述べた手法を用いて,CASLIIプログラミングを対象としたアドバイスシステムを開発した.本システムを実際の授業で活用した結果,学生からのアドバイス要求に対してアドバイスを提示できた割合は平均で約60%であった.提示されたアドバイス文の有用性については,「役に立ったこともあった」と回答した学生がほとんどで,「多くが役に立った」と回答した学生は20%程度であった.「類似性に基づく方法」ではあらかじめアドバイス事例を作成しておく必要があるが,「差異に基づく方法」では教員が行う評価プロセスで自動的に獲得した評価事例を用いるため,「差異に基づく方法」が特に有用であることが明らかになった. アドバイス文の品質を高めることが今後の課題となる.
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