研究概要 |
人間の網膜の視覚情報は受容野に対応した視覚細胞で処理され,対象は上位の視覚連合野で認識される.視覚構造を解析する一つの実験にAperture実験がある.モニター中央に円が表示され線分が移動する.両端に別の二円が表示され,直線は円内を別方向に移動する.両線分が連続した一直線として知覚グルーピングされた場合には,中央円の線分移動方向は両端円の線分移動方向と同一視される.この知覚現象は線分の呈示時間に依存することが知られている.一方,多くの視細胞モデルや視覚ニューロモデルが提案されている.BCS, FCS, ARTMAP, fuzzy ARTMAP等の視覚モデルの改良版として,TAMネットワークがある.網膜受容野から外側膝状体,V1までを構造化し,受容野型入力に対するクラス出力をフィードバック信号と抑制型シナプスにより学習する.本研究ではTAMネットワークを用いてAperture実験データを解析し,以下の研究を推進した. 1)Aperture実験での呈示時間や半径,円間距離を変化させた場合の知覚認識率を算出し,半径と円間距離に対する呈示時間の依存性を明らかにした. 2)Aperture実験における知覚認識率が呈示時間に対して正方向の依存性のみならず,凸性も示すことを明らかにした. 3)TAMネットワークのプルーニング機能によってAperture実験データからファジィルールを抽出し,知覚認識率の呈示時間に対する依存性を解析して,TAMネットワークのフィードバック信号と抑制性シナプスの必要性を明らかにした. これらの結果から,Aperture実験において,呈示時間が500msより短い場合と長い場合に視覚機能の構成が異なる可能性を示唆した.また,TAMネットワークによる画像認識実験での結果も参考にして,TAMネットワークのフィードバック信号の優位性とモデルの有用性を確認できた.なお,研究成果は国際会議や学術論文誌で公表した.
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