研究概要 |
本研究は,分散環境におけるマルチエージェントの振る舞いに対する理論的なモデルを考案し,それに基づいてソフトウェアを構築することで,信頼性の高いソフトウェアの作成を目指すものである. 研究成果は以下の通りである. 1.マルチエージェントを使った問題解決方法の応用例として,アドホックネットワークにおけるマルチエージェント制御システム,分散リソースへのアクセス制御システム,会議スケジュールの調整システムをそれぞれプロトタイプとして作成し,シミュレーション実験と評価を行なった.また,検証エージェントの導入についても検討した.その結果,エージェント同士の振る舞いや意図が衝突した場合でもネットワークに大きな負荷をかけることなく環境の変化への適応が可能な仕組みを提供することができた. 2.時空間推論システムの一つであるRCC(Region Connection Calculus)を拡張して空間的な性質と意味的な性質を統合的に扱えるようなモデルを提案し,領域同士の位置関係と領域上で成り立つ性質が互いに導き出せるような推論アルゴリズムを構築して完全性を証明した.また,図形や画像を表す数値データを記号表現へ変換するシステムおよびその記号表現の等価性判定システムを実装した.その結果,時空間推論の応用範囲を広げることができた. 3.ボードゲームを題材としてプロセス代数を使ったモデル化を行ない,プロセス間のインタラクションや状態遷移が形式的に記述できることを示した.さらに,モデルチェッカを使って1手およびゲーム全体の停止の検証を行なった.この結果は,エージェント間通信における循環性,停止性といった問題に適用可能である.
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