研究概要 |
関数近似,画像修復の両方に関して,従来は重畳されるノイズに相関がないと仮定する場合が,ほとんどであった.しかし,現実にはレンズなどの画像の生成過程や時系列など関数近似する場合を考えると,ノイズに相関がある場合がより現実的である.まず,このような画像を最適に修復することを,先ほどのフーリエ変換を用いてできるだけ解析的に議論した.この議論で応用上重要な点は,従来はノイズに相関が無いとして,近似や修復を行っていたことであり,その近似がどの程度妥当なものであるかを議論することである.そこで,用いた近似的なモデルの範囲内で,もっともよく修復できる限界点を求め,その限界にどの程度ちかづけるかを議論した.その結果,従来用いられていた周辺尤度最大化法でその限界まで到達できないことがわかり,その理由が異なったパラメータが系の挙動に影響を与えないときに生じる特異性によることが示唆された. これは研究計画当初には予想できなかったことであり,プロジェクト遂行上の必要性から,今年度は特異性を持つモデルのパラメータ推定の性質を調べることを第一の目標とした.これまで研究では,特異性を持つモデルの汎か誤差など,学習が終了した後の性質を議論する場合がほとんどであり,このプロジェクトに必要な学習のダイナミクスに関して,まったく研究が行われていなかった.そこで私は,学習のダイナミクスの解析が比較的容易なオンライン学習の枠組みで特異性を持つモデルのパラメータ推定を議論することにした.特異点を持つモデルでは,最急降下法を用いることは望ましくないことがわかった.そこで,系のFisher情報行列を用いた自然勾配法の性質を議論し,この方法では前述の困難が全て解決することがわかった.
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