研究概要 |
少子高齢化が進んでいる日本の社会では,高齢者のQOL(Quality of Life:生活の質)の評価,健康増進が重要課題である。 このような背景のもとに,本研究の目的は,次の3項目とする。(1)心電図,脈波などのバイタルサインに加え,音声言語の無拘束・長時間計測が可能なシステムを開発する。(2)発話機能と摂食嚥下機能の長時間計測と機能評価システムを開発する。(3)この計測システムを利用して,QOL評価と自立促進を目指したe-健康管理法を確立する。 バイタルサインの情報は,日常生活における健康指標においても重要な検査項目である。本研究では,導電性繊維電極をウエアの内側に配置して,そのウエアを着るだけで電極の装着が完了する,心電図の無拘束・無意識モニタリング技術の開発に成功した。顎口腔機能の診断・治療への応用を目指し,舌-口蓋接触圧分布を計測する携帯型システムを開発した。そして,口腔機能治療への臨床応用を行い,その有効性を明らかにした。日常生活における音声言語機能を長時間にわたり調べるために,喉頭マイクロホンを頸部の皮膚表面に装着することで,音声言語を無意識・無拘束モニタリングシステムを開発した。そして,音声言語の長時間計測のデータ収集を行い,1日に会話する時間,笑う回数をモニタリングすることに成功した。さらに,落語鑑賞の前後のストレスホルモンをコルチゾール値から調べた結果,笑いの回数および時間が多いほどストレス低減効果が高いことが明らかとなった。最近,注目されている笑いと健康という研究分野において,笑いの回数および時間がストレス低減に与える効果を実証し,笑いがe-健康管理法の重要な項目であることを明らかにすると共に,予防医学あるいは介護予防への新たな展開が期待できる。
|