研究概要 |
高齢者の家庭内での活動範囲の拡張を目的として,高齢者の活動を見守るモニタリングシステムおよび日常生活を作業と捉え家庭内での作業域の設計・改善を人工現実感を用いて支援できるシステムを中心に研究開発を行った. (1)住宅内での日常行動モニタリングシステム:高齢者の安全確保を目的として,家庭内での行動を画像処理を用いて見守るシステムを開発した.本システムの開発のために,自然光および天井照明の入り切りによる部屋の明るさの変化に対応できる人物の認識手法を開発した.また,モニタリングシステムを開発する過程において,高齢者が家庭内を容易に移動できるように補助する必要が生じたために,天井吊り移動補助具を提案した.手すりは部屋の中,扉には設置できないためにこの補助具を考案した.天井にレールを設置し,そのレールから紐を吊り下げる.紐を手すりの代わりに持ち移動する.実験の結果,紐をつかむ腕以外の身体部位の筋肉への負担(筋電)を20〜50%軽減できることが示された. (2)人工現実感を用いた住宅内行動分析システム:家庭内の様々な活動を被験者が仮想体験できるようにモーションキャプチャ機能を有する人工現実感装置を構築した.本システムにより,家具の高さ,奥行き等の寸法が高齢者の作業姿勢,日常生活活動における身体各部の軌跡に及ぼす影響の分析を可能にした.本研究に関連して,人体リンクモデルを用いた動作シミュレーション手法を開発した.上半身を8つの関節からなるリンクモデルにより表す.高齢者の身体的特性を考慮して各関節の曲げに対する抵抗および制約条件を設定する.そして,動作の始点と終点における手先の位置を指定して各関節の曲げ角度を求める問題を非線形計画問題として定式化した.本リンクモデルを用いて動作の概略を分析する.そして,動作の詳細な分析は人工現実感装置を用いて行えるようにした.
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