研究概要 |
台風では最長20,000年,低気圧では10,000年を対象として,北西太平洋海域,日本海および東シナ海におけるモンテカルロシミュレーションに基づく波高極値の大標本資料の作成,極値統計解析に基づく成因別確率波高の推定と成因別波高極値の母分布の特定,成因別波高極値の確率的合成に基づく全気象擾乱時確率波高および母分布の推定や,確率波高の標本分布特性の検討を行うとともに,過去50年の台風時波高極値や過去20年の低気圧時波高極値の推算資料や観測資料に対する結果と比較した。得た成果はつぎのようである。 1.各海域においてシミュレーション各気象擾乱時年最大波高資料から得た確率波高の空間分布は,既往各気象擾乱から得た結果と比較的よく符合する。これは観測資料に基づく結果によっても支持される。 2.台風時年最大波高の母分布はWeibull分布で近似され,その形状母数は沖縄付近の海域の4〜5から四方に向けて1.4程度に減少する。わが国沿岸の太平洋岸・東シナ海沿岸でみれば,形状母数は九州西岸の2.5から関東沿岸の2を経て北海道沿岸の1.4になり,南西部から北東部に向けて小さくなる。日本海においても,日本近海の5〜7から減少して大陸沿岸で2以下になる。また,低気圧時年最大波高の母分布は日本東方海域における形状母数2から周辺海域の1.4に減少するWeibull分布により,日本海を含めてわが国周辺海域ではGumbel分布により表される。さらに,わが国周辺の大部分の海域で台風時波高の影響が強いことから,全気象擾乱時年最大波高の母分布は台風時年最大波高の母分布とほぼ符合する。 3.確率波高の標本分布はWeibull分布により高精度で近似され,(再現期間/資料年数)比が大きいほど小さい形状母数をとって標本分布の変動幅が拡大する。
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