研究概要 |
プラズマの基礎がわかりやすく理解できる実験装置の開発を行ってきた。対象は,(a)これからプラズマ研究を目指している学生,(b)一般の学生,および(c)理科離れが進んでいると言われる小中学生である。 主な成果を次に示す。 (1)電磁界中の電子の軌跡が肉眼で観測できる装置を製作した。その原理は電子ビームとの衝突で励起された中性分子の発光によるもので,静電偏向,電磁偏向,サイクロトロンおよび螺旋運動,さらにE×Bドリフトなどが観測される。電子の運動への磁界の影響は理論と一致した。 (2)プラズマの閉じ込め実験ができる装置を開発した。6個のコイルの接続方法によって実現できる,一様,ミラー,カスプ磁界配位に従うプラズマの形状の変化が観測できる。また,ラングミュアプローブによって,電子温度,プラズマ密度,プラズマ電位,およびそれらの径方向分布などが定量的に求めることができる。この装置には,残留ガス分析やリークテストなどの真空技術を学ぶために,四重極形質量分析計も取り付けられている。 この装置は実際に授業(実験)に採り入れられた。 (3)コロナ放電の実験装置は一般に占有面積が大きいが,極めてコンパクトなものを開発した。その装置で,コロナ放電の各種のモードが観測・測定できることが実験的に確認された。 (4)気体の種類・圧力などの異なる条件の放電が同時に観察できるように,3本の放電管からなるネオンサインを製作した。これらを,既存のいわゆる「ヤコブの梯子」とともに一つの装置に組み込んだ。前記の(c)を主な対象と考「えたものであるが,学生実験にも充分に利用可能である。 (5)既存のマグネトロン実験装置(熱電子放出の機構・二極管の特性・ダイナトロン効果等を学ぶもの)と新たに製作したコンパクトな「パッシェンの法則」の実験装置と合わせて1つの真空排気装置に組み込んだ。 (6)プラズマ・核融合の関連技術であるマイクロ波加熱の応用としてセラミックスの焼成を試みた。ジルコニアに関して,マイクロ波加熱法による焼成が有効であることを検証した。
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