研究概要 |
シリコン薄膜の結晶性を制御するため,水素ラジカルCVD法によって微結晶シリコン薄膜を作製し,膜構造,膜特性について評価した。特に,アモルファス初期層の影響および結晶の成長過程を明らかにするため,薄膜の結晶性と電気的特性の膜厚依存性について詳しく調べた。ガラス基板とA1基板を用いて,膜構造の基板依存性について比較した。製膜しながら,薄膜の導電率測定を行い,アモルファス初期層の形成過程を調べた。さらに,基板距離を変化させることによって,気相の反応条件を変化させ,2段階成長による製膜を行った。その結果,以下のことが分かった。基板温度200℃で作製した微結晶シリコン薄膜は(111)優先配向を示し,XRDから算出した結晶粒径は厚い薄膜で最大30nm程度であった。しかし,AFMから求めた表面構造体の平均粒子径は90nmから270nmまで増大し,これに伴い表面ラフネスも増大した。これらの結果は微結晶粒が成長し,衝突によって,集合体が形成されていくことを示す。縦方向の暗導電率は,膜厚増加に伴い10^<-11>〜10^<-9>S/cmの範囲で単調に増加した。しかし,横方向導電率の値10^<-7>S/cm〜5×10^<-4>S/cmと比較すると,アモルファスシリコン薄膜に近い低い値であり,アモルファス初期層の影響が強く現れることが確かめられた。ガラス基板とA1基板における結晶成長の違いが確認された。基板温度を200℃から350℃に増加させることで,アモルファス初期層をかなり薄くすることができることが分かった。2段階成長法による実験から,SiH_4流量を調整することによって,成膜速度を向上でき,結晶性を制御できることが確かめられた。
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