研究概要 |
本研究では,オキシン銅の高感度分析法を開発し,それを計測手段として環境中に放散されたオキシン銅の動態を解析することを目的とした。そのために本研究では分析手法として高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い,それに使用される分離カラム内における固定相シラノール基に着目した。 シラノールの機能評価を行った結果,シラノール基にはオキシン銅の類似化合物であるトリス(2-メチル-8-キノリノラト)鉄(III)およびトリス(2-メチル-8-キノリノラト)ガリウム(III)がシラノール基と特異的に相互作用することを見出した。この知見に基づきこれらの化合物をプローブ分子としてHPLC用シリカゲル系逆相固定相表面上の残存シラノール基を識別する手法を開発することに成功した。またこのシラノール基の機能について詳細に検討した結果,シラノール基はその配位機能により鉄(III)およびガリウム(III)と配位子交換反応を起こすことを明らかにした。HPLC分離においてシラノール基の配位機能が溶質の溶離に影響することを明らかにしたのは本研究が最初である。 本研究において,シラノール基の配位機能はオキシン銅の溶離にも影響することが明らかとなった。このため,オキシン銅を錯体のまま検出するためにはシラノール基の活性を抑えたHPLCカラムの選択が必須となる。先出の(2-メチル-8-キノリノラト)鉄(III)およびトリス(2-メチル-8-キノリノラト)ガリウム(III)を用いて,市販逆相カラムを調査した結果,オキシン銅をシラノール基による影響を抑えて分離検出できるカラムを見出すことに成功した。そしてこのカラムを用いて河川水中のオキシン銅を定量することに成功した。この方法をオキシン銅分析の公定法(JIS法)と組み合わせることで,河川水中のオキシン銅の動態について有用な知見が得られることが示唆された。
|