研究概要 |
ハイパーサーミア(温熱処理)は放射線と異なり,直接細胞内に活性酸素を生成することはないが,細胞内代謝機能の変化により二次的に生成する.ミトコンドリアは有力な活性酸素生成源である.アポトーシス過程では多くの情報伝達系が関与することが知られ,活性酸素もまた重要な役割を担う.この活性酸素生成を制御することは温熱処理によるアポトーシスの増感と密接に関係する。本研究では以下について検討し,温熱アポトーシスの情報伝達に関する知見を得た. 1.局所麻酔薬による温熱誘発アポトーシスの増感 局所麻酔薬がヒトリンパ腫細胞株U937において温熱誘発アポトーシスを増強すると同時に活性酸素生成を増強することを見いだした. 2.細胞内過酸化水素生成剤による温熱誘発アポトーシスの増強 6-ホルミルプテリン(6-FP)は,細胞内でスーパーオキサイドを消去して過酸化水素を生成する.細胞内過酸化水素の生成を測定したところ,6-FP単独処理および温熱処理により増加し,両者の併用でさらに増加した.さらにアポトーシス誘導について検討したところ,6-FPは細胞毒性を示さない濃度で温熱誘発アポトーシスを増強した. 3.温度依存性フリーラジカル発生剤による温熱誘発アポトーシスの増強 温度依存性のフリーラジカル発生剤と温熱を併用し,ヒト子宮頚癌細胞株で温熱増感作用を検討したところ,早期アポトーシスではなく,後期アポトーシスに関する増感効果を認めた. 4.疎水性アゾ化合物による温熱アポトーシスの増強 親水性フリーラジカル発生剤と比較するため,疎水性フリーラジカル発生剤の温熱誘発アポトーシスへの影響を検討した.U937細胞を用いて検討したところ,疎水性薬剤は親水性薬剤に比べて約100分の1の濃度で温熱誘発DNA断片化を増強した.
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