研究概要 |
1.UVレーザー励起によるラッカセイ葉のLIF (Laser-induced fluorescence)スペクトル測定(UV-LIF法)によって紫外線と大気汚染ガスが植物の生育に及ぼす影響を調査した結果,次の知見を得た。 (1)685nm(F685)と530nm(F530)の蛍光強度比のR_<685/530>の値は,オゾン濃度C及び暴露時間Tの対数のそれぞれに比例する。R_<685/530>=1-(0.346×1nT+0.958)×C。 (2)R_<685/530>の値は,紫外線照射線量(強度1と照射時間Tの積)に比例して減少する。R_<685/530>=1-0.0375xIxT。 (3)740nm(F740)と685nm(F685)の蛍光強度比R_<740/685>の変化は,紫外線照射時とオゾン暴露時で異なる。 以上のことから,UV-LIF法によって,オゾン及び紫外線ストレスに対する初期障害の評価が可能であることが分かった。 2.新たに開発したISA (Imaging spectrogram analysis)装置を用いて,ラッカセイ葉の蛍光葉内分布の全波長同時計測を行い、以下の知見を得た。 (4)正常葉では葉の柵状組織内で表皮から深部にいくに従ってクロロフィルの蛍光強度比F740/F685の値が増加するが,UV-B照射葉では深さに関係なく,ほぼ一定の値を示す。 (5)UV-B照射によって上面表皮付近で青色蛍光が著しく増加する。 以上ことからISA装置による蛍光の葉内分布測定によって,より精度の高い植物生育診断が可能であることが明らかとなった。 3.1及び2で得られた知見を基に,ストレスの複合影響を評価した結果,次のことが明らかとなった。 (6)正常葉に対する通常量程度のUV-A照射は,葉の活性低下にほとんど影響しないが,UV-Bによって障害を受けた葉に対しては,著しい活性低下をもたらし相乗的なストレス要因となる。
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