研究概要 |
プラスチックなどの合成高分子物質はその利便性のために大量に生産され、広く利用されているが、その利用後の難分解性が間題となっている。生分解性プラスチックは環境への負荷の軽減を目指して開発が進められてきたが、使用後の環境における速やかな分解・浄化を目指す上では未だ不明な点が多く残されている。本研究は今後その物性の良さから普及すると想定されるポリブチレンサクシネート(PBS)を主たる研究材料に取り上げ、土壌中における分解能力の評価方法をつくり、分解に関与する微生物の生態と機能を解明することを目的として行われるが、本年度は以下の成果が得られた。 リン酸を触媒に用いてコハク酸と1,4-ブタンジオールから脱水重縮合反応により調製し、厚さ0.2〜0.3mmにプレス成型したPBS細片は本学藤枝農場の畑土壌の表層に埋設すると乾重が半年で約2割減損した。土壌のPBS分解性細菌,放線菌及び糸状菌の計数と分離を分別的に行うために2種類の選択培地を考案した。これらの選択培地を用いて、藤枝畑土壌に埋設したPBS細片の近傍土壌について、希釈平板法によりPBS分解菌を計数した。その結果、細菌,放線菌及び糸状菌で、それぞれ10^4〜10^5,10^5〜10^6及び10^3〜10^4cfu g^<-1>乾土と評価され、PBS不在の土壌に比べて高い密度を示した。考案した選択培地を用いて、クリアゾーンを形成するPBS分解菌を単離した。形態観察の結果、主な分解菌は放線菌であった。畑土壌におけるPBS細片の分解性を制御することを目的として、キトサンオリゴ糖を混合したPBS細片を作成し、畑土壌における分解性を調べた。その結果、PBS細片にキトサンを混合することにより、埋設8週後で5割以上,埋設40週後には試料の回収が困難な程までに重量保持率が低下した。このようなキトサン添加効果は、他の生分解性プラスチック(ポリカプロラクトン,ポリ乳酸等)では明らかではなかった。
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