研究概要 |
チキソトロピーゲルを用いた金属イオンの新しい抽出--目視計測法を開発した。この機能性ゲルは抽出操作前後は固体状態であるが,抽出時に振動が加わると液体状態となる相変化を示す。すなわち,抽出時は液液抽出系となって抽出効率の高い形態をとり,抽出後は固液系となって相分離に適した形態を生じる。従って,液液抽出系と固液抽出系の両者の特徴を合わせ持つこれまでにない発想に基づく新規抽出法と成り得る。さらに,水試料中の金属イオンをこの機能性ゲルにより簡易迅速に抽出し,ゲル相の色彩変化に基づく目視計測法を開発した。本法は測定場を選ばず,且つ特殊な技術も必要とせず,短時間に高選択的に目的成分の濃度を把握する計測法となる。本研究では次の3つの成果が得られた。 (1)水中の鉄(II,III)イオンの簡易迅速な目視計測法の開発 (2)水中の銅(I、II)イオンの簡易迅速な目視計測法の開発 (3)銅(I、II)イオンの2段階目視計測法の開発 その結果,銅(I、II)イオンに関しては,濃度に応じて無色→薄黄色→橙色→赤色に色彩応答するチキソトロピーゲルによる計測法が確立された。一方,鉄(II,III)イオンに関しては,無色→薄橙色→赤色に色彩応答するゲルが構築できた。さらに銅(I、II)イオンに関しては,2ステップ計測法として,2度の抽出を行い,2度目の抽出においてゲルが発色しなかった場合には基準値以下、発色した場合は基準値以上であると判断でき、その色強度から濃度を知ることができた。本法は測定場を選ばず,且つ特殊な技術も必要とせず,短時間に高選択的に目的成分の濃度を把握する計測法となる。さらに,このチキソトロピーゲルという機能性ゲルを抽出技術に活用することで,従来の液液抽出と固液抽出の両者のメリットを併せ持つこれまでにない新しい理念に基づく抽出技術を構築することができ,今後種々の分野で利用され発展していくことが期待される。
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