研究概要 |
本研究の目的は,キラルなバックボーンを有する新規人工核酸の合成を行い,骨格のキラリティーに基づく高次構造形成能,分子認識能を調べることである。本年度は,まず光学活性セリンを基本骨格とする新規核酸類縁ポリエステルの合成を計画し,光学活性モノマーユニットの合成反応,エステル結合生成反応,保護基の除去条件の検討を行った。まず,塩基部に保護基を必要としないチミン誘導体に関して検討を行い,光学純度99.5%以上のモノマーユニットを合成することができた。チミン以外の核酸塩基を有するモノマーの合成では,核酸塩基部のアミノ基の保護基として,穏和な中性条件下還元反応によって迅速に脱保護可能な2-アジドメチレベンゾイル基を導入した。次に得られたモノマーを縮合し,2量体の合成を行った。脱水縮合剤に関して詳細に検討したところ,短時間かつ高収率でエステル結合を生成することができる新しい試薬を開発することに成功した。エステル結合生成反応においてラセミ化は全く観察されず,オリゴマー合成も可能であることが示唆された。また,カルボキシ末端の保護基について種々検討したところ,2-フェニル-2-(トリメチルシリル)エチル基が有効であることがわかった。この保護基はフッ化物イオンと反応し,エステル結合を損なうこと無く脱保護可能であった。次次に,固相合成法によるオリゴマーの合成を試みた。固相担体とモノマーを連結するリンカーとして,穏和な中性条件下切断可能な新規化合物を合成し,固相担体への導入反応,切断反応,モノマーユニットの結合反応について詳細に検討した。本研究で開発した新規脱水縮合剤を用いると,液相合成と同様に,固相担体上でも良好な収率でエステル結合を生成でき,さらにエステル結合を損なうこと無く固相担体から目的物を切り出すことができた。
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