研究概要 |
1.分子設計,構造活性相関:還元活性化されて殺細胞効果を発揮するファルマコフォアの候補として,N-oxide体及びニトロ芳香環とその還元体について検討する。triazine-N-oxide骨格の-N=をbioisosteraである-C(CN)=基に変換したquinoxaline-N-oxideは,同程度又はそれ以上の低酸素毒性を示すのみならず,血管新生阻害作用を示したことから,これらの活性における新規ファルマコホアであると考えられる.MOPACによって求めたLUMOレベルと低酸素細胞毒性に相関が見られた. 2.in vitro抗腫瘍活性及び血管新生阻害作用:p53正常及び変異型細胞としてSAS/neo,SAS/Trp248,H1299/wtp53,H1299mp53細胞を用いて,in vitro細胞毒性試験を行った.いずれも低酸素特異的に強い細胞毒性効果を示した.さらにDNAラダーの検出によってこれらの化合物は低酸素で特異的にアポトーシスを誘導していることが明らかになった.この際,p53依存性はみられなかった.酸素条件での毒性はTX-402が最も低かった.CAMアッセイにおいていずれの候補化合物も高い血管新生阻害作用を示した. 3.ハイポキシアシグナル経路に対する影響についての解析:HIF-1a及び、下流遺伝子発現に対する影響を調べたところ,hypoxic cytotoxin類はいずれも低酸素で特異的にHIF-1αをタンパク質レベルで抑制した.HIF-1α下流遺伝子であるGlut3,aldolase,VEGFを遺伝子レベルで抑制した.これにより,hypoxic cytotoxinはHIF-1αの阻害を介したVEGFの抑制によって血管新生阻害作用を発揮するものと予想されるhypoxic cytotoxinの血管新生阻害作用の機構としてた. 以上により,hypoxizc cytotoxinの新しい生物活性として,低酸素特異的にp53非依存的にアポトーシス誘導し,さらにHIF-1シグナル経路を阻害することによって,血管新生などの低酸素ストレス適応反応を抑制することが明らかになった.TX-402は中でも低酸素特異性が高いことから,有望な癌治療薬の候補化合物と考えられる.本化合物はp53変異によって悪性度を増した癌に対しても効果が期待され,転移や再増殖などを抑制することも期待される.
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