研究概要 |
好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris R-47)は,2つのα-アミラーゼ(TVA1,TVA2)を持つ。これらは,デンプンに加えて,通常のα-アミラーゼがほとんど加水分解できない環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)やα-1,6結合を規則正しく含む多糖(プルラン)をも加水分解できるという興味深い基質特異性を持つ。また,TVA1はデンプン・プルランなどの高分子量基質に,TVA2は,CD・オリゴ糖などの低分子量基質に対してよく働く。これらの酵素の加水分解機構を解明するために,以下の研究を行った。 不活性型TVA2ミュータント酵素と,α-,β-,γ-CD(それぞれグルコース単位が6,7,8)との複合体の結晶を作成し,X線結晶解析を行い,CD認識・加水分解機構について新たな知見を得たので論文誌に発表した。また,プルラン認識機構を明らかにするために,プルランモデルオリゴ糖(パノシルパノース)との複合体についてもX線結晶解析を行い,α-1,6結合認識について新たな知見を得たので論文誌に発表した。 TVA1不活性型ミュータント酵素とマルトヘキサオースとの複合体のX線結晶解析を行った。その結果,触媒部位とは別に,ドメインNに2箇所の基質結合が認められた。このことは,ドメインNがデンプン結合ドメインとして働き,TVA1が高分子量基質を好むことと密接に関係があると考えられる。この結果は,それを立証する生化学データとともに,論文誌に発表した。 TVA1,TVA2のX線結晶解析の結果から,CDを認識するアミノ酸を相互置換することにより,TVA1とTVA2の基質特異性の相互変換を試みた。その結果,TVA1ミュータント酵素(F313A)において,デンプン:CDに対する加水分解活性比を,野生型TVA2のものに近づけることに成功した。この結果は,論文誌に発表した。
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