研究概要 |
1.グリセロールデヒドラターゼの結晶構造解析 組換え体グリセロールデヒドラターゼを精製し,酵素化学的性質を明らかにするとともに,酵素を結晶化してX線構造解析を行った。触媒部位はジオールデヒドラターゼと高い相同性を示したが,そこに結合していたプロパンジオールはジオールデヒドラターゼとは異なり,R体であった。 2.ジオールデヒドラターゼの活性中心にある残基への変異の導入と変異型酵素の機能解析 本酵素の活性中心でK+または基質と直接相互作用している7つの残基,Gln141,His143,Glu170,Glu221,Gln296,Asp335,Ser362のそれぞれをAla残基に置換した変異型酵素を作成し,それらの機能を解析した。これらの変異酵素のうち,Ha143AとEa170Aは酵素反応中間体の基質ラジカルとB12rが確認できるが反応生成物がほとんどないことから,酵素の触媒機能に重要な機能を担うことが示唆された。さらにHisα143を,Glu, Lys, Leu,およびGlnに置換した変異型酵素を作製して酵素機能を解析した。その結果,Hα143が正常な触媒反応の継続にも重要であることと,Hα143Aでは水酸基移動の活性化エネルギーが増加していることが示唆された。 また,補酵素の結合に関与する残基Sα224およびKβ135残基の部位特異的変異により,Sα224が酵素による補酵素の活性化と機構依存的不活性化反応の抑制に重要であり,Kβ135が補酵素の結合に重要であることを明らかにした。 3.補酵素の下方配位子がコバルトに配位したまま結合できるMeCb1関与酵素の作製の試み ラットメチオニン合成酵素のHis773をGlyに代えた変異酵素遺伝子を作成し,昆虫細胞で大量発現を試みたが,安定な発現条件を見出せなかった。
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