研究概要 |
縁取り空胞型遠位ミオパチー(DMRV)は日本で初めに報告された筋疾患で、日本人に多くの患者が存在する。最近、DMRVの責任遺伝子がクローニングされ、UDP-GlcNAc 2-epimerase/ManNAc kinase(UDP-GlcNAc 2-epimerase)遺伝子であることが明らかとなった。DMRVの原因遺伝子のUDP-GlcNAc 2-epimeraseはCMP-シアル酸の生合成系の重要な酵素であるため、DMRVおよびHIBMではシアル酸を還元末端に持つ糖鎖が減少することが予想されている。まず、DMRV患者生検筋組織での糖蛋白質の糖鎖変化について調べるために、各種レクチンを使用して、5家系6人のDMRV患者の凍結筋切片の蛍光組織染色を行った。その結果、DMRV患者ではPNA(Galβ1-3GalNAcに結合)により強染するのに対して、対照においては陰性であった。その他のレクチンにおいて両者で差は見られなかった。また、PNAの染色は筋細胞膜に局在するパターンを示した。さらに、レクチンブロットにおいても確認した。このことから、DMRV患者の骨格筋では、PNAで認識される糖鎖変化が起きていることが示唆された。 DMRVではリソソーム/エンドソームまたはオートファゴソームの機能亢進と考えられる縁取り空が存在する。そこで、後期エンドソームのマーカーであるLAMP-1,LAMP-2,LIMP-1,LIMP-2,およびEndolyn/CD164に対する抗体を用いて凍結筋切片を蛍光免疫染色した。その結果、いずれの抗体もDMRV患者の筋細胞質において顆粒状の強い染色が見られ、特に縁取り空胞の存在する変性筋繊維では著しい傾向にあった。このことはDMRV患者の筋組織においては、リソソーム/エンドソームまたはオートファゴソーム機能亢進の可能性が示唆された。今後、DMRVでの糖蛋白質の糖鎖異常とリソソーム/エンドソームまたはオートファゴソーム機能亢進との病態解明が重要になるだろう。
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