配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2004年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2003年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2002年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
|
研究概要 |
インクエン酸脱水素酵素(ICDH)は多くの生物から単離されており,細菌由来のICDHのほとんどは補酵素としてNADP^+を要求する.これに対し,我々が見出した化学合成独立栄養細菌Acidithiobacillus thiooxidans由来のICDHはNAD^+依存型である.また本酵素はアミノ酸配列や反応機構など細菌由来の3-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)と類似している.本酵素のX線結晶構造解析を行いNADP^+特異的ICDH,及びIPMDHとの比較検討を行うことにより,基質認識機構,NAD^+・NADP^+型補酵素認識機構の解明に役立つと考えられる. 我々はまず本酵素遺伝子のクローニングを行い,大腸菌を用いた大量発現系を構築した。次に,ICDH大量発現プラスミドpKK-ICDHを用いて大量精製を行った.酵素精製は熱処理60℃,5minの後,DEAE-ToyopearlとSephacryl S-200HRの二つのカラムに供する事で行った.得られた精製酵素を用いて結晶化を行った結果,ICDH-NAD^+複合体の状態で四角両錐の結晶が得られ,1.9Åまでの解析データが得られた。本結晶ではニコチンアミドのリボースがC-dループのThr105の主鎖窒素に配位しており,ニコチンアミド環周辺の電子密度も高分解能で解析できた。ニコチンアミド基の窒素がC4炭素に対してcis側にあり23°の二面角で基質側に傾いていた。そこで,量子化学計算による水素の電荷を計算した結果,C4の2つの水素原子はアミド基のNH_2が近づくcis配座で負荷電を持ち,二面角23°で最も大きな負電荷を帯びると予測された。一方,アミド窒素がC4炭素に対してtransではC4位の水素が正荷電を持ち,ハイドライド形成に不利と示唆された。これらの結果は,補酵素だけではハイドライドが放出されない理由や酵素反応の立体選択性にも明確な説明を与える魅力的な仮説を提供した。 現在,酵母由来のICDHが臨床検査薬として利用されている.At-ICDHは熱安定性,pH安定性や基質であるインクエン酸に対する高い親和性の点で酵母由来ICDHより優れていたため,臨床検査薬として実用化されることになった.
|