研究概要 |
部位特異的変異によるアミノ酸残基の置換によりタンパク質の機能部位の同定と分子機序の研究が行われてきた。しかし、膜タンパク質の場合、1個のアミノ酸の置換によりタンパク質のコンフォメーションの変化が見られる場合や、細胞内のタンパク質の輸送が異常になる場合が多くポジティブな確証を得ることが難しかった。従来からの12回の膜貫通モデルを精密化して、基質輸送の水性ポアを構成する膜貫通セグメント(Transmembrane segment, TM)を確定し、TMの中心にある最も重要な結合部位を構成するアミノ酸残基を同定し、基質認識の分子機構を明らかにすることを目標とした。このため実験系として、酵母の高親和性グルコース輸送体Hxt2と低親和性グルコース輸送体Hxt1を選び、両者のキメラを作成して基質認識にかかわるアミノ酸残基を同定する手法を採用した。以下の成果を得た。 1)糖輸送体のすべてのTMを置き換えるTM shuffling法により4,096個のcomprehensiveなキメラのセットを作成した。 2)高親和性糖輸送を行うためにはHxt2の4つのTM, TM1,5,7,8が必要であることがわかった。 3)この4つのTM中のHxt2とHxt1で異なる20個のアミノ酸残基のすべてを置き換えるcomprehensiveなrandom mutationを行い、TM5の中のLeu-201が高親和性を付与するに必須なアミノ酸残基として同定された。 4)分子動力学によるsimulationにより、Leu-201は輸送体内に構成される水性ポアに面しており、TM8と協調して基質認識にかかわっている可能性が指摘された。
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