研究概要 |
1.SNF/SWI複合体が核受容体のcoactivatorとして働くとの報告が数多く出されている。我々はSNF/SWI複合体の構成因子hSNF2a/hbrm, hSNF2b/BRG-1に特異的に相互作用する蛋白を酵母two-hybrid法によって同定した。TMFとよばれるこの蛋白は、核受容体の1つアンドロゲン受容体に相互作用するとともに協調的に働くと報告されていることから、SNF/SWI複合体のcoactivator機能に関連する可能性が示された。TMFは核のみならずゴルジ体に多く存在することも示した。(論文1 K.Mori et al.) 2.エピジェネティックス修飾として最近注目を集めているヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)のメチル化を行う蛋白G9aのノックアウトマウスを作製した。両遺伝子座を欠損したマウスは発生初期に致死的であるが、ES細胞では真正クロマチン領域のH3K9のメチル化が著しく低下していたことから、遺伝子発現の抑制に関わっている可能性が考えられた。実際、融合蛋白系を用いてこの蛋白によって転写が抑制されることを示した。(論文2 M.Tachibana et al.) 3.遺伝学的によく解析されたエピジェネティックス因子にポリコーム蛋白群がある。これら蛋白を構成因子として含む複合体の精製、他の構成因子の同定を行った。Bmi1を安定的に発現する細胞を樹立し、Bmi1含む複合体を精製した。変異によってBmi1と遺伝学的に類似した形質を示すことが知られる遺伝子群(PC1,PC2,PC3)の他、複数の蛋白が存在していた。さらにEEDを含む複合体を抗体によるaffinity精製によって得た。他の構成因子としてEZH1,S(z)12などが得られた。この複合体はH3のK27をメチル化することが判明した。また、PC1,2,3のクロモドメインはH3K27を含むメチル化されたヒストンH3に特異的に相互作用すること、SNF/SWI複合体の相互作用はむしろ阻害されることなどを示した。(論文準備中 H.Kato et al.)
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