研究概要 |
tRNAのプロセシング、修飾、アミノアシル化に働く各酵素単独およびtRNAとの複合体のX線結晶構造解析を行った。tRNAのプロセシング酵素に関しては、Aquifex aeolicus由来のRNase PHの結晶構造を2.3Å分解能で決定し、tRNAの3'末端トレーラー配列の加リン酸分解機構を明らかにした(J.Biol.Chem.2003)。また、CCA enzymeについて、Archaeglobus fulgidus由来のクラスIの酵素の2.0Å分解能での結晶構造解析に成功し(EMBO J.,2003)、さらにtRNA前駆体との複合体の結晶化に予備的に成功した。また、Aquifex aeolicus由来のクラスIIのCCA enzyme(A-adding enzyme)に関してはtRNA前駆体およびATPアナログとの複合体に関し、2.7Å分解能での構造解析をほぼ完了している(論文準備中)。tRNAの修飾酵素に関しては、古細菌のtRNAのG15に特異的にArchaeosineを導入するArchaeosine guanine transglycosylaseとtRNAの複合体の結晶構造を3.3Å分解能で決定し、tRNAのDアームがほどけて酵素の活性部位に挿入され、L字型のtRNAの構造がλ型に大きく変形することを、世界に先駆けて発見した(Cell,2003)。また、すべての生物でtRNAのG18をメチル化するGm18 methyltransferase(TrmH or SpoU)に関しては、1.85Å分解能での結晶構造解析に成功した(Structure,2004)。アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)に関しては、20種類のaaRSの中で唯一構造が未発表なアラニルtRNA合成酵素(AlaRS)に関して、Thermotoga malitima由来の酵素とtRNAとの複合体の結晶化に予備的に成功した。また、Methancoccus jannaschii由来のTyrRSとtRNAの複合体の結晶構造を2.0Å分解能で決定し他(Nat.Struct.Biol.,2003)。さらに、本来のタンパク質合成に加えて、細胞外に分泌され、血管内皮細胞のアポトーシスを誘導し血管新生の抑制に働く、多機能酵素であるヒト由来トリプトファニルtRNA合成酵素の結晶構造を2.3Å分解能で決定し、変異体の生化学的・細胞生物学的解析により、tRNAのアンチコドンを認識するドメインに挿入された8ペプチドがアポトーシス活性に必須であることを明らかにした(Nat.Struct.&Mol.Biol.,2004)。
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