研究課題/領域番号 |
14580753
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経化学・神経薬理学
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
服部 尚樹 関西医科大学, 医学部, 助教授 (80288828)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2003年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2002年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | クロライド / ATPase / アミロイドβ / アルツハイマー病 / ホスファチジルイノシトール4リン酸 / Cl^--ATPase / イノシトール / グルタミン酸 / PI / PIP4 |
研究概要 |
Cl^--ATPaseは神経細胞内Cl^-濃度を低く保ち、GABAなどによる抑制性神経伝達を可能にしている。我々は、アルツハイマー病脳においてCl^--ATPase活性が低下し、低濃度アミロイドβ蛋白(Aβ)はCl^--ATPase活性を抑制して神経細胞内Cl濃度を上昇させることを見いだした。今回、(1)Cl^-ATPas 51kDaサブユニットのクローニング、およぴ(2)アミロイドβ蛋白(Aβ)によるCl^-ATPase活性抑制に対するリン脂質の関与について検討した。 (1)Cl^--ATPase蛋白の回収率を上げるため、精製にATP結合担体であるreactive redカラムを用い、更に高感度ATPase活性測定法を確立した。現在、活性含有蛋白を2次元電気泳動にて分離し、質量分析計にて数個の候補蛋白質を同定した。 (2)Cl^--ATPase活性は、神経細胞ミクロゾーム画分における0.3mMエタクリン酸感受性ATPase活性を吸光法で、細胞内Cl濃度はCl感受性蛍光色素MQAEで、グルタミン酸神経毒性はDNAfragmentation、WSTおよびLDHアッセイでそれぞれ測定した。10nM Aβ2日間処置によりCl^--ATPase活性は47%に減少したが、Na/K-ATPase活性、anion-insensitive Mg^<2+>-ATPase活性には影響しなかった。ホスファチジルイノシトール(PI 50-750 nM)、ホスファチジルイノシトール4リン酸(PI4P 50-150 nM)は容量依存的にCl^--ATPase活性を回復した。Aβによりコントロールの3倍に上昇した神経細胞内Cl^-濃度は、75nMのPIおよびPI4Pで正常レベルに回復した。10nM Aβ処置神経細胞を10μMグルタミン酸に10分間暴露したところDNA fragmentationの増加、細胞生存率の減少(神経細胞のWST還元活性低下、培養液中のLDH上昇)が認められ、75nMのPI、PI4Pはこれら神経細胞毒性を軽減した。グルタミン酸による神経細胞興奮毒性はアルツハイマー病の病態に深く関与している。今回、Aβ、グルタミン酸による神経細胞障害がPI、PI4P投与によるCl^--ATPase活性の回復と平行して、軽減されることが示された。以上より、アルツハイマー病における神経細胞変性の原因のひとつに、AβによるCl^--ATPase活性低下に伴う細胞内Cl濃度上昇が関与していること、また、アルツハイマー病神経細胞変性の治療薬として、イノシトールの適用の可能性が示唆された。
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