研究概要 |
本研究の目的は,サルまたはラットを実験動物として用い,情動行動発現における島皮質の役割をニューロンレベルで明らかにすることであった.平成14年度には,主として,視覚刺激に基づく遅延反応・遅延報酬Go/Nogo課題を遂行しているサルの島皮質から単一ニューロン活動を記録して課題各期における応答様式を解析し,サル島皮質は,注意,報酬予期,行動選択などに関るニューロンの存在すること,島皮質内部には機能局在のあることことなどを明らかにした。また平成15年度には,主として,覚醒行動下ラットの島皮質から単一ニューロン活動を記録し,報酬性または嫌悪性の味覚刺激に対する応答様式を解析し,基本味(甘味,塩味,酸味,苦味)に特徴的に応答するニューロンの存在すること,水に選択的な応容を示すニューロンや味覚刺激後の洗浄時に特異的に応答するニューロンの存在すること,塩味に強く応答するニューロンと苦味に強く応答するニューロンでは最適味覚刺激(それぞれ塩味と苦味)以外の味覚刺激にはあまり応答しないが,甘味に強く応答するニューロンでは甘味と酸味への応答が比較的似ており,また,酸味に強く応答するニューロンでは,塩味以外の応答が比較的よく似ていること等を明らかにした.甘味は報酬性,酸味と苦味は嫌悪性の味であるので,本研究知見より島皮質がこうした味覚の"質"のコードに重要な役割を果たしていることが示唆された.さらに平成16年度は,報酬および罰を用いた行動課題を遂行中のラットの島皮質から単一ニューロン活動を記録して課題応答性を解析し,ラット島皮質には生物学的に意味のある音を可塑的にコードするニューロンのあることなどを明らかにした.
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