研究概要 |
目的:虚血中におけるグリア細胞の電気特性や化学受容性の変化を調べる目的で研究を行なった。 方法:新生ウイスターラット大脳皮質よりグリア細胞(アストロサイト)を分離・培養したものを標本として、以下の実験を行なった。 (1)パッチクランプ法を用いて単一グリア細胞に虚血液(無酸素・無グルコース液または代謝阻害剤・無グルコース液)を投与した際に発生する膜電流変化を測定し,そのイオン機序や薬理学的特性について調べる。 (2)グルタミン酸投与によって誘起される膜電流を測定し,虚血条件下おけるグルタミン酸受容体感受性の変化を観察する。 結果:培養グリア細胞に虚血液を灌流投与すると、直後に一過性の内向き電流が発生し、それに引き続き、緩徐な外向き電流が発生した。これらの電流について解析した結果、一過性内向き電流はクロライドイオンによって、緩徐外向き電流はカリウムイオンによって発生している可能性があることが解った。グルタミン酸含有液を灌流投与すると内向き電流が発生した。このグルタミン酸誘起電流はNMDA受容体およびnon-NMDA受容体の阻害薬でその50%が抑制されたことより,グルタミン酸誘起電流にはイオンチャネル型グルタミン酸受容体によるものだけでなく,グルタミン酸トランスポーターによる電流も含まれていることが示唆された。虚血液負荷直後のグルタミン酸誘起電流は負荷前と比べて有意な差は見られなかった。長期虚血負荷による影響に関しては,長時間記録が困難であったことから観察できなかった。 結語:虚血によって影響を受けることが少ないと思われてきたグリア細胞は,神経細胞と同様に虚血早期からその膜電位が変化することが明らかとなった。このことは細胞外環境の恒常性維持に関与しているグリア細胞の機能が虚血によって影響を受けることを示唆する。しかし長期的影響に関しては不明なことより,さらに実験を続ける必要がある。
|