研究概要 |
1)平常時のスンクスのD1活性はラットに比べて低いのに対し,著しく高いD2活性をもつことから,血中のT3濃度がD2によって維持されており,絶食時においても血中T3濃度が低下しないことが考えられた. 2)その原因を探るため,スンクスのD1,D2 cDNAのクローニングを行い,その構造を調べ,他動物種のD1,D2と比較・検討を行ったが,D1,D2は他動物種のものと似た構造をもっており,分子レベルでの異常は観察されず,スンクスのD2の高活性の原因が,その発現レベルにあると考えられた. 3)絶食試験では,スンクスの血中T3濃度は,マウス・ラットの報告とは異なり,絶食試験において低下する傾向がみられなかった.肝臓のD1 mRNA発現量および褐色脂肪組織のD2のmRNA発現量ならびに活性は低下する傾向がみられたのに対し,大脳皮質のD2 mRNA発現量ならびに活性は,増加する傾向がみられた.スンクスの血中T3濃度が絶食によって減少しない要因の一つとして,大脳皮質のD2活性が増加していることが考えられた. 4)砂漠性の動物は基礎代謝率が低いことで,水分消費量を低下させ,環境に適応していると考えられている.絶食試験に用いたスンクス全てが,水分自由摂取状態での4日間の絶食に耐えられたことから,スンクスが絶食に弱いと考えられる原因は,エネルギーそのものの不足にあるのではなく,血中T3濃度が低下せず,基礎代謝率が低下せず,水分要求量が減少しないことによる,水分不足の結果である可能性が示唆された. 以上のように,スンクスは甲状腺ホルモンの代謝において,マウス・ラットで報告されていないような特殊な機能を発達(あるいは低下)させており,ユニークな実験動物となりうることが明かとなった.
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