研究概要 |
1.コンパートメントモデルによるインスリン腹腔内吸収動態の検討 インスリン腹腔内吸収動態を解析すべく3-コンパートメントモデルを作成し,数値解析を行った結果,速攻型,超速効型インスリン・アナログ腹腔内投与時、吸収動態に有意差を認めなかった. 2.Closed-loopインスリン腹腔内注入アルゴリズムの作成 血糖値に対するインスリン注入率を求める関係式IIR(t)=Kp・G(t)+Kd・dG(t)/dt+Kc(Kp, Kd, Kc:インスリン腹腔内注入パラメータ)を導き,インスリン腹腔内注入アルゴリズムを作成した結果,腹腔内注入パラメータ(Kp, Kd, Kc)は(0.041,2.91,-2.72)を算出しえた. 3.コンピュータを用いたsimulation study 正常な血糖応答反応を再現した際のインスリン注入パターン及び血漿インスリン動態を腹腔内及び皮下注入アルゴリズム作動時においてsimulationし,静脈内注入アルゴリズム作動時と比較検討した.超速効インスリン・アナログ皮下注入時,インスリン注入パターンは実現不可能な負注入を要したのに対し,腹腔内注入時には負注入を要することなく,生理的血漿インスリン動態を再現し得た. 4.アロキサン糖尿病犬に対する経口ブドウ糖負荷時の血糖制御 経口ブドウ糖負荷時の血糖制御で,静脈内注入アルゴリズム作動時とそれぞれ比較検討した結果,静脈内注入時と腹腔内注入アルゴリズム作動時での血糖制御は,全経過を通じ,両者とも良好な血糖制御パターンを示した.皮下注入アルゴリズム作動時では,高値,低値を示した血糖パターンの時間帯が存在した.インスリン動態では,静脈内注入と腹腔内注入アルゴリズム作動時では同じパターンを再現し得たが,皮下注入作動時では,遅延型高インスリン血症のパターンを示した. 5.アロキサン糖尿病犬に対する血糖日内変動の制御 アロキサン糖尿病犬に対して,インスリン腹腔内注入アルゴリズムを組み込んだ携帯型人工膵島を用いて,朝夕の2回(計80kcal/kg/day)の食事摂取時の血糖制御を試みた結果,高血糖及び低血糖を認めることなく良好な血糖コントロールが可能であった. 以上,インスリン腹腔内注入アルゴリズムの作成し,本アルゴリズムの有用性が確認された.
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