研究概要 |
潤滑性能を摩擦係数の測定により定量的に評価することは,関節の変性変化の病態の把握に有用である.また,薬剤投与などの方法による関節変性の治療効果を評価するためにも有用である.そこで,本研究課題では,動物膝関節および顎関節を対象とした摩擦測定を力覚制御ロボットアームを用いて行い,変性変化と潤滑機能の変化の関連を評価した. ウサギ膝関節を使用した実験において,軟部組織を温存したものと,軟部組織を除去したものを比較した.最終的な屈曲角度は1°とし,摩擦速度は0.5mm/sとした.垂直加重は15Nとした.それぞれの試料において5回測定し,その平均をとった.脛骨表面に15Nの垂直加重を加え,この座標をロボットに記憶させた後,ロボットにより膝関節に微小回転運動をさせ,さらに座標を記憶させるという作業を3回繰り返し,これらの座標をロボットに辿らせた.これにより,膝関節に模擬的な回転運動を加え,摩擦係数を測定した.軟部組織を温存したものは摩擦係数の平均値が0.021±0.009であった.軟部組織をすべて除去したもりは,摩擦係数の平均値が0.016=0.005であった. 実験試料としてブタ顎関節を使用した実験においては,下顎骨をアーム型ロボットの先端に,下顎窩を6軸力センサに固定した.関節間に感圧フィルムをはさみ20Nかけたときの圧力分布から咬合状態を調べ,基準位置とした.この地点から前進後退の直線滑り運動を加え摩擦係数を測定した.さらに,基準位置から1mmずつ下顎骨を変位させて摩擦測定を繰り返し,感圧フィルムで測定した圧力分布との比較を行った.下顎骨が内側または外側方向に移動するほど摩擦係数は高くなったことから,咬合の食い違いが,潤滑機能に影響を及ぼすこと,および,その潤滑に流体潤滑が深く関わることが明らかになった.
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