研究概要 |
病理組織診断に有用な定量的情報を画像解析により算出し,病理医へ提示する肝細胞癌向けの病理診断支援システムを実現することを目的として研究を行い,非癌部との鑑別が難しい初期の高分化型肝細胞癌の鑑別を支援する診断支援システムを実現した. まず,以下の3段階からなる核の位置を抽出する手法を実現した.(i)核の位置候補の抽出:ラプラシアンフィルタリングなどの種々の画像処理手法を用い,核が存在する可能性の高い位置を抽出.(ii)核候補位置ごとに輪郭を抽出:核の候補位置を中心として放射状の線を仮定し,その線上から輪郭点を1点づつ選択することにより輪郭を抽出する手法(Radial Snakes)を新たに考案し,従来は困難であった曖昧な輪郭も高速・高精度で抽出することを可能とした.(iii)輪郭情報を元に核の可能性の低いものを除外:(i)で抽出された核の候補位置には,核でないものも多数含まれる.それら核である可能性の低いものを輪郭のエネルギーを利用して除外した.本手法により,核の抽出正解率84.8%(誤抽出率12.2%)を達成し,後のGUIによる修正において必要なボタン操作の回数を27%に低減した. また,核の位置を用いた2種類の特徴量(核密度,核密集度)について検討し,何れも感度と特異度の平均で90%以上の値を持つ有用な特徴量であることを明らかにした.そして,核位置の修正や特徴量の抽出などを簡単なマウス操作で実現するためのGUIを開発した.その結果,全体の処理を画像1枚あたり2分程度で行うことが可能となった. 以上の成果により,本研究が目的とした肝細胞癌診断支援システムを実現することができた.今後は,より多くの医療機関で利用できるようにさらに発展させてゆく予定である.
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