研究概要 |
動物実験による至適末梢血幹細胞数,至適ポリマーの探究及び選定を行った.実験動物として子犬を用い、末梢血幹細胞の採取は連続式の血液成分分離装置を用いて行った.採血側として橈骨動脈を,返血側として大腿静脈を用いた.採取した血液を遠心分離し,遠心後の沈殿部分に末梢血幹細胞が含まれていた.末梢血幹細胞のマーカーとしてCD34^+細胞を用いた.採取血液中の白血球数と採取血液の重量の積を,血液比重の1.05で除して,総採取細胞数を求めた.この総採取細胞数にCD34^+細胞陽性率を乗したものが採取できたCD34^+細胞数である.体重1kg当たりのCD34^+細胞数が2X 10^6を超えていれば十分量の末梢血幹細胞が採取できたと考えられ、十分な細胞数が得られれば,生分解性ポリマーの導管(7X 10mm)に播種した.2-3時間後に細胞を採取した同一動物を全身麻酔下に左開胸し,肺門部から心膜飜転部までの末梢肺動脈をこのティッシュエンジニアリングで作成した導管で置換した.コントロール実験として組織断片を播種しないポリマーシートのみの移植も行った.移植3-12ヶ月後に作成された組織に対して生化学的,生力学的,免疫組織学的検討を行った.生化学検査として,組織中コラーゲン,エラスチン,カルシウム濃度の測定を行い,インストロン張力検査機を用いて作成された組織の最大張力を測定し自己の同じ部位の組織と比較検討した.組織学的には免疫染色の手法を用いて内皮細胞の指標である第8因子を染色すると共に細胞間隙の間質蛋白質を染色し自己組織と比較検討した.同種細胞(allogenic)は拒絶反応の因子を排除できないため,細胞は全て自己(autologous)細胞を用いた.末梢血幹細胞も骨髄細胞と同様に再生血管の播種細胞として適していることが示唆された。
|