研究概要 |
本研究では,大腿骨近位端の海綿骨について骨粗鬆症による易骨折性の発現機構を構造工学的視点から検討するための方法を開発した.また,この方法によって得られた解析結果を基にして,骨粗鬆性骨折でも長期に安定して骨折部を固定することができる骨折部固定システムを開発することを目的とした. 従来2次元的に検討されてきた骨梁構造形態をμCT装置で3次元的に検討するだけでなく、μCTを測定しながら骨に変形を与えて,その動態を観察する方法を完成させた.また,実際にヒト骨粗鬆海綿骨と正常海綿骨を用いて両者の動態の違いを比較的に検討した.骨粗鬆症海綿骨の破壊様式をShear型,Crack型など3種類に分類して,骨粗鬆症に伴う骨梁構造形態の構造脆弱性と破壊様式の関係を検索した,骨粗鬆症海綿骨は正常海綿骨に比べると見かけのせん断強さは30%程度と弱かった.せん断強さは破壊様式に依存するが,その程度は小さい.荷重の作用方向によって破壊様式は変化するが,その原因は骨萎縮後の骨梁それぞれの形態的変化に依存すると思われた.すなわち,部位によって骨梁の構造剛性が異なり,荷重支持機能に形態の差が顕著に反映されるためであると考えられた.同じ骨梁構造(同試験片)であっても荷重の作用方向が異なれば変形動態が異なり,結果として骨強度や破壊機転が大きく異なることがわかった. 骨固定用ねじのねじ部と骨との固定具合を,両境界の接触摩擦や材料非線形を考慮しつつFEM解析によって検索した.最適ねじ山形状を検索するため,5種類のねじ山形状を提案して骨に分布する応力とひずみの状態を検討した.また,ねじ表面にハイドロキシアパタイト薄膜をコーティーングして,骨との間に骨伝導能を期待したねじ/骨システムの有限要素構造解析と変形シミュレーションも行った.ハイドロキシアパタイト被覆ねじは,ねじ/骨境界に応力の集中的な発生を抑え,境界域に均一な応力分布をもたらす効果があることがわかった.
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