研究概要 |
本研究の聞き取りの対象者は、主として、障害者サポート団体,NPOに中心的スタッフとして参加している親たちである。その親たちのライフヒストリーの聞き取りを、母親の立場、また、父親の立場から記録し、その記録データをジェンダーの視点から分析した。分析の内容は、次のような点である。 1,障害のある子の親たちが社会に開かれていくきっかけと「我が子が障害をもつということの意味」との関係。子どもが成長する各段階における父親と母親の違いや親としての共通性について分析した。 2,性別役割分担規範がどのような影響を与えているのかについて、父親、母親と子どもとのの関わりについて分析する。 3,親たちの「障害者の自立」についての考えと「我が子の自立」に向けての親たちの取り組みがどのようなものかを見る。 5,以上をもとに、障害者の自立のために、どのような親子関係が形成されることが望ましいのか、そのための社会的サポートはいかなるものが必要かについて明らかにしていく。 インタビュー調査から次のことが明らかになった。(1)「我が子が障害をもつということの意味」とは、子どもが人間としての権利と尊厳を持って生きることを支えるという親が次世代育成感を持った「本当」の親子関係を形成することの自覚の契機であること。(2)性別役割分業規範が、両親の大きな影響を与えており、母親の心身共の負担が大きいことが明らかとなった。それは、母子密着といわれる状況を生み出し、その結果、障害のある人々の依存的状況を作り出すことが明らかになった。(3)このような現状で、人間としての尊厳を持つために「我が子を自立」させていく上には、「母親の自立」を促すことが必要であり、そのためには、障害のある人々が地域自立することに理解のある「他者の存在」が重要であることが分かった。
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