研究概要 |
本研究では,ボランタリー連邦のマネジメントを分析するための先行図式として,「自律協働システム」の概念を提示した。自律協働システムは,2つの副領域から構成される。すなわち,会員が本務を遂行するところの自律領域と,会員による調整された努力が行われるところの協働領域である。こうした観点より,会員を協働へと動機づけるための2種類の誘因が識別される。(a)協働領域内で会員が感じる満足である「インハウス誘因」,(2)協働領域から自律領域へと還元される「持ち帰り誘因」である。モデル分析は,(2)の持ち帰り誘因こそが重要であることを示した。 本研究では,その他にも以下の点が議論された。 1 学生が実験に参加し,ボランタリー連邦の会員として見なされた。そして,上記2種類の誘因が協働意欲に及ぼす影響が検証された。結果は,(1)一般に,会員は持ち帰り誘因に惹かれる,(2)しかし,「繁忙型」会員と比べて,本務が忙しくない「有閑型」会員は,インハウス誘因に惹かれる傾向がある,(3)有閑型グループと繁忙型グループの間で,協働意欲の程度に差はない,の3点を示した。 2 本研究と見解を異にするマンサー・オルソンの集合行為論が再考され,欠点と代案が明らかにされた。 3 「理念型」としてのボランタリー連邦には職員がいない。しかし現実には,相当量の職員が存在している。社団法人のデータを用いて,アソシエーションの中の職員の数が以下の要因によって規定されることが示された。(a)アソシエーションの規模(正会員数と収入額),(b)年齢,(c)官庁との関係,(d)提供されるサービスの数。さらに,多数の職員を抱える社団法人では,媒介型ではなく集約型のテクノロジーが採用されていることも示した。 4 ボランタリー連邦が存続するためには,会員から貢献を引き出すだけでなく,支払能力を維持していかなければならない。ボランタリー連邦の生存のための戦略,構造,リーダーシップが議論された。
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