研究分担者 |
べん野 義己 理化学研究所, 微生物系統保存施設, 室長 (40087599)
西渕 光昭 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (50189304)
江崎 孝行 岐阜大学, 医学部, 教授 (90151977)
三上 襄 千葉大学, 真菌医学研究センター, 教授 (40092100)
本田 武司 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60029808)
|
研究概要 |
20世紀の半ばには,抗生物質により感染症の制圧が時間の問題と考えられた時期もあったが,新しい耐性菌の登場,新興・再考感染症問題など,感染症制圧は21世紀の極めて大きな課題として持ち越された。この問題に対処するためには,病原微生物学の一層の発展が求められ,そのためにはあらゆる病原微生物株が系統的に保存されていることが根底になければならない。一方で,病原体の不適切な保存や不用意な取扱は取扱者ばかりでなく,周辺環境あるいは一般社会にバイオハザードを及ぼす恐れがあり,バイオテロリズムの問題の浮上も加わって、十分なバイオセイフティーの確保の必要性が益々高まっている。 特に大学での教育研究の場でのバイオセーフティと微生物資源確保に関する教育研究が重要であるが、その実態は十分とは言えない。本研究では,病原微生物資源保全の総合的なシステムを構築するための研究計画策定を目的として、主として大学での実情調査と若干の海外調査を行った。 全国の国公私立大学を対象にして、微生物の安全管理システム(微生物安全管理委員会の設置、安全管理規程の制定)、研究用施設設備の状況(レベル3施設あるいはレベル2施設の有無、規模)、微生物学教育の実態(バイオセーフティ教育、実習施設のレベル、実習の実態)、カルチャーコレクション(保存微生物の状況)などについてのアンケート調査を行い、医学、歯学、薬学、農学、家政学など294の部局からの回答が得られた。その結果、全学あるいは部局独自に微生物安全管理委員会を設置していると回答したところは約半数であり、医学部医学科のあるところは6割で設置されているものの、保健・看護系、歯学系、薬学系では半分あるいはそれ以下であり、さらに安全管理規程の制定状況も医学科で57%、全体では43%に留まっている。また、レベル3の微生物に対応して実質的な実習を行っているところはほとんどないと言ってよく、感染症への対応に問題があることが実態として浮かび上がった。これらは、大学等教育研究機関におけるバイオセーフティとカルチャーコレクションのシステム整備のための総合的研究に向けて、基礎データを提供したものである。
|