研究概要 |
本研究は、視覚確認作業におけるエラー傾向を検出し、防止するために,新たな検査法と改善法の開発を目標としたものである.そこで先に考案した複合数字抹消検査(Compound Digit Cancellation Test, CDCT)を改良して導入した.改良版では,小さな数字(局所数字)を並べて大きな数字(大域数字)を構成した複合数字が100個程度印刷された検査用紙を作成し,被験者に,指定したターゲット数字が全体数字あるいは部分数字にあれば斜線を引いてチェックする作業を制限時間を設けて,できるだけ速く正確に行わせた.そして局所・大域レベルにおける作業量やそのスピード,エラー率が測定された.また,Attentional Blinkの指標として,ターゲットが大域数字にあった直後に局所数字にも出現した場合,およびその逆の場合のエラー率を測定した. これらの測度をもとに,各個人のエラー傾向を大域型,局所型,および両極型などにタイプ分けすることに成功し、性格特性との関連も分析した。また、作業時間の経過に伴う顕著な変化をとらえて,大域エラー増加型,局所エラー増加型,両レベル増加型,両レベル維持型に分類する試みも行った.さらに,連続抹消条件の分析から,大域方向・注意切り換えブリンク型,局所方向・注意切り換えブリンク型,両方向・切り換えブリンク型,ブリンクなし型などに該当する被験者をピックアップ可能なことを示した。 CDCTを注意切り換え訓練作業として実施すると、その効果は、他の視覚作業課題(新聞校正検査や、理もれ図形検出検査など)にも転移し、パフォーマンスを向上させることを示した。また、左から右に走査する試行よりも,右から左に走査した試行の方が大域数字の検出率が有意に高くなるという実験結果が得られ、これにより視覚確認作業においては、特に再チェックのときなどには、走査方向を右から左に行うとより全体情報をより的確に把握できたり、局所から大域への注意切り替えがより柔軟に行えることを示唆した。
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