研究課題/領域番号 |
14651046
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
社会学(含社会福祉関係)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
遠藤 徹 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教授 (10309073)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2004年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2003年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2002年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 有機化合物 / 沈黙の春 / サイボーグ / 食のインスタント化 / サイボーグ研究 / サイケデリック・ムーヴメント / 薬害問題 / 食品添加物 |
研究概要 |
60年代は、化学物質、特に人工的に作り出された有機化学物質がさまざまなかたちで日常生活に入り込んできた最初の時代となった。この未曾有のできごとがもっとも顕著に進行したアメリカを例にとって、それがいかに拒絶と賞賛の狭間で揺れ動いたかを検証した。 拒絶の最たるものは、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』(62)にその典型例をみることができる。カーソンは、科学者であったがゆえに、新しい有機化学物質が、人間の身体に容易に侵入し、生物学的に人間を「書き換えつつある」ことに震憾したのである。 他方、アメリカ政府は、どちらかといえば化学物質を肯定的にとらえた。たとえば、NASA有人宇宙飛行計画のなかで、いかにして人間を宇宙空間に適応させるかという問題を、サイボーグ化という方向性で解決しようと目論んだ。すなわち、化学物質を宇宙服から注入することで、飛行士の心身状態を変容せしめ、さまざまな宇宙的環境に適合させようと構想したのであった。 このように、拒絶の方向としては、食品添加物、薬害、化学物質過敏症などが、歓迎の方向としてはピルや若者たちのLSDによるサイケデリックカルチャーなどがあった。ビタミンのように、この二つの評価が同居した物質もあった。このような二つの方向性に引き裂かれる傾向は、個々人の内面の葛藤として60年代を生きた人々には体験されたのである。 また、この60年代は、食のインスタント化、人工化が進み、さらに「緑の革命」にみられたような器官穀物の人工交配品種化が進み、野菜などでは完全な人工交配種F1作物への移行が完了した時代でもあった。かくして、60年代は、人間が身体に取り入れるあらゆるものが、人工化した壮大な人体実験が進行した時代であった。同時にそれに対する不安と興味とが交錯した稀有な時代であったといえるのである。
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