研究概要 |
フランス中世文学作品を多数ディジタル化し,商品化したフランスChampion社のCD-Romソフト,Corpus de la Litterature Medievaleを入手し,その内容構成を吟味し,付属する検索ソフトBabelの機能・使い勝手等を徹底的に解析することを試みた。 収録作品は作品インデックスに掲載されたものが879篇。文学史に登場する主な作品を網羅し,現行の冊子版の諸作品ばかりではなく,すでに入手困難な19世紀末から戦前に至る時期の定期刊行物に掲載された作品をも含んでいて,作品選定には何ら問題はない。しかしながら電子化の過程での少なからぬ数の誤りがいわば書籍における誤植のような形で入り込んでいることは,検索・コンコーダンス生成においては致命的な欠陥となりかねない。すみやかな,そして随時の更新が望まれる所以である。 検索ソフトは「あいまい検索」ができないことをのぞけば,機能・スピードともにかなり優秀な性能を備えているので,質量ともに高い水準にあるテクスト集成とあいまって,Corpus de la Litterrature Medievaleは全体として画期的な研究用ツールとみなすことができよう。しかしCD-Romで供給される商品の限界として,汎用性を持たないこと,いわば閉ざされた世界を作っていることを指摘しなければならない。 今後の課題としては,そのような製品と汎用性のあるテクスト・データベースをどのように併存させるか,その際著作権に関わる問題をどのようにクリアーするか,という二点が特に重要なものとして挙げられる。
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