研究概要 |
文学研究への橋渡しとなる理論研究としての情報社会論のモデル構築を継続し,分析モデルの詳細化を行った.具体的には,一昨年度の成果である論文「オートポイエティック情報社会論」に基づき,オートポイエティックなシステムの二元性を考慮したモデルの詳細化を行った.また,昨年度の論文「ネットワーク社会とオートポイエティック情報システム」に基づき,ネットワーク社会においてオートポイエティックな機能を期待されているロボティクスを,モデルを詳細化して分析した.研究成果を論文「オートポイエーシス・システムの二元性と情報社会システム」と「ネットワーク社会における人とロボットの共生」にまとめた. 文学研究にシステムズアプローチを導入するための先駆的理論として,ルーマンの芸術一般へのシステムズアプローチの適用として、『社会の芸術』がある。しかし,文学一般における、言語一般からの文学の創出emergenceという観点から見た場合,ルーマンの理論には満足できない点が多い.ルーマンの理論に代わる,文学におけるシステムズアプローチ適用の可能性を探るために,実例として小林秀雄の散文、マラルメの詩と散文をテクストとして取り上げ,詩的創出としてのポエジーの成立と,散文における文体の<声>の創出をオートポイエーシスの観点からモデル化する研究を行い、その成果を論文「ポエジーと文体におけるオートポイエーシス」にまとめた。 研究期間の最終年度にあたり、西洋古典や古代中東の文芸作品を分析するための手法についての見解をまとめた。西洋古代、とりわけ古代ギリシアの文化については、近年メソポタミアやエジプトからの強い影響が指摘される傾向が強く、その独自性を再検討する必要が出てきている。この問題を扱うための手法を、システムズアプローチの観点から検討した。そしてその手法を、創世神話の構成要素、賢者観念の定型表現、物語の話型とメッセージの連関、などの具体的事例の分析に適用することを試みた。 最終年度として,研究成果を四論文にまとめ,研究報告書を刊行した. 論文1:ポエジーと文体の<声>におけるオートポイエーシス 論文2:構成要素の関係性から見た神話の比較研究 論文3:オートポイエーシス・システムの二元性と情報社会システム 論文4:ネットワーク社会における人とロボットの共生
|