研究課題/領域番号 |
14653011
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
経済史
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
黒石 晋 滋賀大学, 経済学部, 教授 (20263030)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2003年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2002年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 貨幣学 / 非破壊分析 / X線蛍光分析 / 中性子即発ガンマ線分析 / 貴金属貨幣 / 古代貨幣 / 比較成分分析 / 蛍光X線分析 / 古銭学 |
研究概要 |
本研究は、現代の超精密微量成分分析技術を古代・中世の貴金属貨幣に適用し、その分析結果から貨幣の挙動を解明して経済史に結び付けようという試みである。 二年間の文献調査により、貨幣の非破壊分析の方法として有望な方法は、簡便なX線蛍光分析と大掛かりな中性子即発ガンマ線分析がありうることが明らかになった。X線蛍光分析は重金属の場合表面分析にとどまり、また同位体の検出もできない等限界はあるが、簡便であるため多くの不特定試料を試行錯誤的に分析するには適している。一方の中性子即発ガンマ線分析は全体分析が可能で同位体も検出できる利点をもつが、中性子ビームを用いるため原子炉の存在を前提とする大掛かりなものになるのが欠点である。 一方、二年間の分析サンプル探索作業の結果、科研費により、世界最古の貨幣といわれる古代リディア期・アケメネス期のエレクトラム貨・金銀貨、およびローマ帝国初期の金貨(アウレウス)・クシャン朝期の金貨(スターテル)を入手することができた。そこでこれらに対して蛍光X線分析をおこなった。分析の結果はまだこれから詳細に解析する余地を残しているが、リディア期の銀貨には以下のような事実が明らかになった。すなわち、少額銀貨の方が、高額銀貨よりも銀の含有率が著しく低いのである。このような貨幣鋳造法は、近代の貴金属貨幣時代にもしばしば見られる貨幣学的論理に一致し、古代人がこのような貨幣理論を知っていたのだとすれば驚くべきことである。とはいえ、分析サンプル数はわずかで、さらなる検討が必要である。また、クシャン朝の金貨はローマからの金貨の流入によって鋳造されたといわれ、そうだとすると大規模な交易の存在が立証される。今回の分析では、微量成分の解析の困難やサンプル数の制約などから確証にまでは至っていないが、比較解析を実行中である。 この2年の研究では中性子即発ガンマ線分析にまでは至っていない。これも日本原子力研究所の分析装置が使用条件を緩和しているので、今後、分析の期待が持たれる。
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