配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2003年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2002年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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研究概要 |
端的ケーラー計量の最も重要なものはスカラー曲率が一定のケーラー計量である.与えられたケーラー類にスカラー曲率一定のケーラー計量が存在するための必要十分条件は何だろうか?この問いは微分幾何の問いであるが,これが幾何学的不変式論におけるChow-Mumford安定性と同値であろう,という予想が,小林昭七とN.Hitchinによって提唱された小林/Hitchin予想である.複素幾何学の中心的な問題のみならず,多くの分野が関連し,多くの関連問題を生む力を持つ.本研究ではこの予想に力学系的な方法での挑戦を試みた.与えられた偏極に住む定スカラー曲率ケーラー計量が固定点になるような力学系を構成できた.(L, h)を射影的代数多様体X上のHermite計量hつきの偏極とし,hの曲率形式はケーラー形式とする.このケーラー形式に関するトレースが定数になるような(1,1)形式がc_1(X)に一意的に存在する.それをリッチ形式に持つような体積形式をV(h)とし,V(h)を体積形式に持つような正の偏極を(L, h')とする.LのHermite計量hに新しいHermite計量h'を対応させることにより,Lの正曲率Hermite計量の空間上の力学系が構成させる.この力学系の特徴はラプラス方程式とモンジュアンペール方程式を解くという積分操作で構成される点である.したがってこの力学系はリッチ流のように偏極のエネルギーレベルを下げる働きをすると考えられる.また,もしhの曲率形式がスカラー曲率一定のケーラー計量ならhはこの力学系の固定点である.もしこのアプローチが働くなら,解析的な困難は一般の偏極での反標準偏極でも本質的には同じである.反標準偏極の場合,この力学系はリッチ流の離散化になっている.そこでChow/Mumford安定性のもと,この力学系がChowノルムが大きいときにどのような振舞をするかを調べた.Chowノルムが大きいとき,安定性はリッチ曲率の集中があまりに強くなれないことを保証する.この設定で力学系を1ステップ走らせるとリッチ曲率の集中度はある意味で弱まることが示せる.また,実カテゴリーでの実験ではあるが,ベルジェ崩壊球面では,上で導入した力学系はリッチ流の軌道上をリッチ流と同じ向きに走り,標準球面に収束することが確認できた.
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