研究概要 |
本研究は,超離散化手法によってデジタル化された差分系の数理構造をmax-plus代数との関連性を考慮しながら解析し,その成果を用いて連続系における解析学的理論を離散系に翻訳しようとするものである.この目的のもとで我々は次のような成果を得た. 1.相平面内で任意の初期値から一定の周期でその初期値に戻ってくるような非線形区分線形力学系が存在する.この種の力学系は,従属変数変換により,原点を中心とする一定角度の回転をもたらす線形系に翻訳可能である.以上の結果は差分力学系における線形化と同一の手続きを行うものであり,これにより連続系と離散系の新しい結びつきが解明された. 2、相平面内で任意の初期値から有限ステップ内でアトラクタに常に落ち込むような一群の非線形区分力学系を提案した.これら力学系は,可積分力学系をもとにその保存量を用いて一定の手続きを経て作成することが可能であり,アトラクタを明示的に表現できる.またリャプノブ関数を構成的に作成可能であり,アトラクタ・リャプノフ関数の両方を明示できる. 以上の成果は,従来の非線形力学系理論では捉えられなかったものであり,可積分系理論に特有の数理構造の明示性が,アトラクタを有するような非線形力学系においても通用することを示した点はたいへん意義が大きい.また,得られた力学系は超離散化を通じて差分方程式による表現とmax-plus方程式による表現の双方に翻訳可能であり,max-plus方程式のようなデジタル系においても連続系と同様の解析学的理論が通用することが示されたこともすぐれた成果であると認識している.
|