研究概要 |
定曲率空間の上の適当な波動作用素の基本解は初等函数の積分と微分だけで書き表わされる.代表者が導いた公式を応用すれば,奇数次元定曲率空間の奇数個の積空間上の適当な波動作用素はすべて自明でないホイヘンス作用素であることが分かる. 3次元ユークリッド空間における歴史的なホイヘンスの原理は,どの地点においても,波は瞬時に通り過ぎ,波は一回だけ通る,という二つの主張からなる.しかし,3次元球面上では第一の主張は正しいが第二の主張は正しくない.従って,定曲率空間という単一の範疇をなす局所ユークリッド空間,局所球面空間,局所双曲空間における波動を包括的に説明できるように,ホイヘンスの原理を述べ直すことが望ましい. そこで本研究においては,短時間における性質である「瞬間的ホイヘンス作用素」と長時間における性質である「永久的ホイヘンス作用素」とを区別して定義した.第二の主張を,どの地点においても波が通る時間の集合が離散的である,と言い直したのが後者である.従来からのホイヘンス作用素は新しい定義では瞬間的ホイヘンス作用素となり,そのうちで,奇数次元定曲率空間の奇数個の積空間上の適当な波動作用素はすべて永久的ホイヘンス作用素となる.こうして,基本解が分かっている沢山の作用素を同一の規準で論じることが可能になった.これが本研究の最大の成果である. 以上の成果を本年度当専攻において講義し,英文の講義録(100頁)を本研究の経費で印刷し,受講者,専攻教官および学内外研究者に配布し,本学図書館に納めた(研究発表,図書[1]).また,本研究のために作成したエリー・カルタンの著作の日本語訳「学習記録1,2,3」(それぞれ192頁,183頁,136頁)を本研究の経費で印刷し,専攻教官および学内外研究者に配布し,本学図書館および史料館に納めた(研究発表,図書[2]).
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