研究概要 |
負K中間子と核子との相互作用を実験的情報(KN散乱長、Kp原子エネルギーシフト、ラムダ1405のエネルギー・幅)を使って構築した。これをもとにK中間子を含む小数核子系の束縛状態のエネルギー・幅を計算することができる。KN間の強い引力のため、K中間子の束縛エネルギーは100MeVを越えるので、シグマ粒子とパイ中間子への崩壊は禁止される。このため、K中間子束縛状態は、そのエネルギーが大きいにもかかわらず、崩壊幅は20MeVくらいと小さいことが予想され、したがって、離散的準位として同定される可能性があることが判明した。このようなK中間子束縛状態を(K, pi)反応から生成させる新しい方法が提起され、その反応機構や生成断面積をラムダ1405,ラムダ1520などをドアウェーとする考え方から考察した。K中間子を含む原子核系の構造を反対称化分子動力学の理論で計算する試みがなされ、これまでの理論結果とつじつまの合う結果が得られ、さらに複雑な系にまで適用された。これらの理論的結果から、K束縛状態での核子の密度は通常密度の数倍以上に大きくなっていることがわかった。したがって、K束縛状態の実験的探索は高密度状態の生成とその構造の研究につながるという新しい見通しが得られた。
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