研究概要 |
今年度は、1.砂丘の水槽実験に関わる研究者と共同し,バルハン砂丘の衝突過程について新たな知見を得た。2.また,2年間の研究の総括として地形の動力学全般に関しての理論模型のあり方と今後の展開の方向性について検討した。 1の砂丘の動力学については、水槽実験と理論計算の比較を行った。とくに世界で最初の水底バルハン砂丘衝突を実現した実験家(大阪大・遠藤氏)らと共同し,バルハン砂丘衝突過程を再現する2D数値模型を構成するとともに、一次元衝突を模型化した3変数力学系を構成し論文を投稿した(Collision dynamics of two barchan dunes simulated by a simple mode, A.Katsuki, H.N., N.Endo, K.Taniguch, cond-mat/0403312)。また一次元衝突の3変数力学系に関して他の研究者(テキサス州立大・V.Poutkaradze氏ら)と理論解析を開始した。 上記2に関しては、研究会(「動力学視点からの地形進化の動力学」京都大学)を主催し、本研究組織以外の関連研究者も集めて地形全般についての情報の交換と地形動力学のあり方について考えた。具体的な話題は、砂丘の動力学、火山噴火のダイナミクス、火星表面地形のダイナミクス、黄土高原地形のダイナミクスなど極めて広範におよんでいるが、共通の問題点として ○(従来、主に地形研究者が行ってきたような)個別な地形形成の事例に対するモデリングが個別の事例のを超えて普遍的な地形現象の理解に役立つか。その場合どのようにモデルを構成するべきか。 ○(地球内部や火星表面など)観測不能/困難な部分をもつ地形現象を模型化して行く際、見えない部分を「逆問題」としてどのように解釈し、模型に組み入れていくか。 があげられ討論を行った。これらの問題は最終決着はしていないが、萌芽研究の趣旨に沿って、今後より広範囲の研究者による地形動力学研究の共同作業へ移行するための基本問題を提示することになった。研究会での発表・討論の内容は「物性研究」に掲載される予定である。 さらに、砂丘の動力学一般に関しては関連研究を広く調査収集し、来年出版予定の単行本(量子渦のダイナミクス/粉体と砂丘の力学(共著)朝倉書店)で学生(学部後期・大学院生対象)や研究者一般に地形進化の研究を広く紹介する準備を進めた。
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