研究概要 |
1945年長崎原爆によって発生した「黒い雨」の痕跡を堆積物中より見出すため,黒い雨が降下した地域にある長崎市西山水源池,諌早市宗方町宗方上溜池,島原市緑町の溜池において柱状試料を採取した.各採取コアについて堆積物の岩相(粒度・色調・構成物など)の鉛直的変化を記載し,粒度,構成鉱物,チャコール,Pb-210,C-137,Pu-239+240分析を行った結果,爆心地に近い西山水源池堆積物から「黒い雨」降下物が見出されたが,爆心地から離れた諌早市宗方町宗方上溜池や島原市緑町溜池堆積物中からは「黒い雨」の痕跡は発見できなかった.西山水源池堆積物中の「黒い雨」降下物は,人工放射性核種であるC-137やPu-239+240濃度が明瞭なスパイク状ピークを示し,火災によって生成されたチャコールや粒子状Pbが含まれていた.さらに,この「黒い雨」降下物が環境へ与えた影響を知るために,「黒い雨」層準を含む堆積物について,ダイオキシンや多環芳香族炭化水素の分析,重金属分析や珪藻などの微化石分析を行った。ダイオキシン・多環芳香族炭化水素やPb・Cu・Znなどの重金属元素濃度は,いずれも「黒い雨」層準で高濃度を示した.また,水域の環境変化に敏感な珪藻はその個体数が「黒い雨」層準の直上で急減することが判明した. 以上の研究結果の一部については,日本文化財科学会第19回大会(2002年,明治大学,東京),第4回環境放射能研究会(2003年,茨城),日本放射化学会年会・第47回放射化学討論会(2003年,大阪),4^<th> European Meeting on Environmental Chemistry (2003年,England)で発表した.
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