研究課題/領域番号 |
14654104
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物理化学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長澤 裕 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教授 (50294161)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2003年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2002年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
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キーワード | クリプトバイオシス / 分子ダイナミクス / 超高速分光 / 非線形分光 / ガラス転移 / 凍結保護 / 乾燥保護 / 糖類 / フォトンエコー / フェムト秒超高速分光法 / 生物の耐乾燥性・耐凍結成 / トリハロース / 縮退四光波混合 / 溶媒ダイナミクス |
研究概要 |
糖水溶液の超高速ポンプ・プローブ(PP)測定と、糖ガラスの3パルスフォトンエコー(3PPE)測定を行った。研究結果の概要をそれぞれ次に示す。 1)PP測定 オストワルド粘度計による測定では粘度は糖濃度上昇とともに非線形に増大し、この依存性は2糖類のトレハロースがもっとも大きかった。このことより糖類は高濃度では水素結合により会合体を形成している可能性がある。そこで、色素分子マラカイトグリーン(MG)を用いて超高速PP測定を行い、フェニル基の拡散的回転運動に対する糖水溶液のミクロな粘度の影響を調べた。ピコ秒領域におけるMGの励起状態寿命は粘度上昇とともに長くなり、指数関数的な減衰が多指数関数的になった。これは糖水溶液が高濃度では不均一的になっていることを示唆している。また、粘度の濃度依存性が一番大きいトレハロース水溶液では、励起状態寿命の粘度依存性が他の糖に比べて小さいことがわかった。このことは、トレハロースは会合することによって水溶液の巨視的な流動性を効率よく制御することができるが、その水素結合ネットワーク内の水分子は比較的自由に動き回れることを示唆する。 2)3PPE測定 色素分子オキサジン4を用いて3PPE測定を行い、糖ガラスとポリビニルアルコール(PVA)との比較を行った。室温ではエコー信号の減衰は非常に速く糖ガラスとPVAの違いは見られなかったが、10Kの低温では糖ガラス中のエコー減衰がPVAのそれと比べて明らかに遅くなった。この結果は、糖ガラスは高周波数の熱揺らぎを持つので低温では熱揺らぎが抑制されるが、PVAは低波数の熱揺らぎなので抑制されないということを示唆する。つまり、単分子ガラスである糖ガラスの方が有機ボリマーガラスであるPVAより密に分子が充填されるため、自由体積が小さいことを示唆し、糖の耐凍結、耐乾燥保護剤としての優位性を示している。
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