研究概要 |
本研究では,多層膜の反射理論計算で発見した"多層膜鏡の表面をミリングすると物理光学的であり,幾何光学的な基板ミリングとは原理的に全く異なる光学的効果が得られる"ことを可視光で実験的に検証する.また,得られる基礎データをもとに,"多層膜の表面ミリングで反射波面を物理光学的に精密制御できる"ことを応用研究へ展開する道を探ることを目的とする. 本年度は実験に先駆けて,昨年度開発した反射位相計算ソフトウエアを改良し,より完成度の高いものとした.具体的には,基板+薄膜(1-4層)+キャップ膜の構成を可能とし,反射位相のみならず複素振幅反射率の入射角依存性と入射波長依存性を計算・表示出来るものとした.このソフトウエアを用いて波長632.8nmの可視光による検証実験のための成膜物質選択と最適膜厚計算を行った.BK7基板上に,成膜物質1:TiO_2,成膜物質2:SiO_2を5周期成膜後,マスクを段階的に施しながら成膜することで所定の段差を持った膜構造を形成し,ミリングした場合と同様の効果が得られる構成とした.なおこの構成では,5周期成膜することで反射率90%が得られ,1周期の段差で約180°の位相変化が見込まれる. その場計測用自動消光エリプソメーターを組み込んだイオンビームスパッタリング装置でTiO_2とSiO_2単層膜を成膜し,屈折率nをそれぞれ2.44,1.65と決定した.この結果を元に最適膜厚をそれぞれ64.8nm,96.1nmと決定した.また,エリプソメーターによるその場膜厚制御を行うためにに,解析ソフトウエアを新規に開発し,成膜装置へ組み込んだ.現在,可視光検証用の多層膜成膜と干渉計測用の光学系のセットアップを終え,干渉計測による検証を開始した.
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