研究概要 |
慣性-静電閉じ込め核融合では,陽極の中心にグリッド状陰極を設置し,重水素等の気体を封入して電極間で放電を行うと,生成されたイオンが陰極中心で衝突して核融合反応を生じることにより中性子を生成する。装置は小型,軽量のため可搬型中性子源として利用可能で,特にパルス中性子源を開発できれば,対人地雷等の探知システムを構築することも可能になる。そこで,本研究ではパルス中性子源に適した放電回路の設計・製作および中性子検出システムの設計・製作を行い,放電特性ならびに中性子生成特性を調べ,実用化のための資料を得ることを目的とした。 本年度の研究により,以下の成果が得られた。 1.耐電圧65kV,電流容量30Aの半導体スイッチを用いたパルス放電回路を製作した。ただし,電源には既存の直流電源を用い,直流放電にパルス放電を重畳する方式としたため,パルス電圧とパルス電流を自由に設定することはできなかった。今後,パルス放電回路にも独立した充電電源を備える必要がある。 2.パルス放電時の電流-電圧特性を得た。直流放電時のグロー特性とは異なり,正抵抗特性を有していることがわかった。 3.分光計測により,ビームおよび陰極中心のコアプラズマが存在していることを見出した。 4.パルス電圧30kV,電流2A,重水素の封入圧力10.4mTorrにおいて,5×10^6n/sの中性子生成率が得られた。この値は,直流放電で得られた中性子生成率の比例則に従っていることがわかった。これは,本研究で用いた放電電流の範囲では,ビーム-ビーム衝突が未だ支配的ではないことを意味している。 5.パルス電源と放電部を接続するケーブルの静電容量によりパルス電圧の立ち上がりが遅くなり,さらに直流放電を行っているにもかかわらず放電形成遅れが生じることが明らかになった。この時間遅れを低減するためには,密度の大きな予備電離プラズマ源あるいはイオン源が必要であると考えられる。
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